自己破産する直前に滞納分の税金等を支払った場合の偏頗弁済について

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自己破産する直前に滞納分の税金等を支払った場合の偏頗弁済について

偏頗弁済とは、弁護士に自己破産を申請して手続き等が完了する直前に、優先的に特定の債権者にだけ返済行為をすることです。

 

これは、全ての債権者への返済を停止したのに、一部の債権者だけに返済することは不公平になるため、禁止されています。

 

しかし、自己破産が確定する直前に滞納していた住民税や固定資産税などの税金を支払ったとしても、偏頗弁済にはなりません。

 

ここでは、自己破産時のさまざまな状況における偏頗弁済の有効、あるいは無効となる条件や滞納税金、免責事項、立替金の内容などに関する対応処理について考えてみます。

 

「租税等の請求権」は例偏頗弁済の適用外

税法の規定で、自己破産をした場合でも滞納していた税金などのほか、国民年金や健康保険などの租税債権の支払義務は延滞金も含めて消滅しないことになっています。

 

自己破産者の中には、所得税・住民税・固定資産税などの国税や地方税のほか、国民年金や健康保険、保育料、下水道料金などを滞納している人は大勢います。しかし、そのような生活困窮者が自己破産しても、租税債権に関しては救済されません。

 

ただし、税金に関しては「他の納税者との公平性」という定義に基づいているため免責はできませんが、市役所や自治体が徴収を猶予してくれこともあるので、ある程度の救済にはなるかと思われます。

 

さらに、滞納処分によってすべての財産は差し押さえられますが、著しい生活困窮者の場合は滞納処分が一時停止され、その状態が3年続けば納税義務は消滅します。

 

このように、国税や地方税、国民年金、健康保険、保育料、下水道料金などの租税債権の滞納分に関しては、自己破産しても免責されることはないので、自己破産する直前に支払っても問題はありません。

 

たしかに、偏頗弁済のように自己破産する直前に特定の債権者だけへの返済行為は禁止されていますが、税金に関しては偏破弁済にはなりません。

 

租税債権というのは、免責されない部類のもので、配当においても最優先される債権で、財団債権か優先的破産債権のどちらかに属するものです。つまり、一般債権者よりも優位な債権なのです。

 

滞納処分によって財産を差し押さえられても税金の支払い義務は免れないので、自己破産する直前に支払いが可能なら払ってしまう方がいいです。

 

しかし、どうしても払えない場合は、税務署や市役所の担当者に事情を説明して、分割納付にしてもらうしかありません。

 

税金は破産法163条で例外とされる

破産法163条では、「破産者が租税等の請求権または罰金等の請求権につき、その徴収を有する者に対してした担保の供与または債務の消滅に関する行為には適用しない。」とあります。これにより、偏頗弁済にはあたらないと説明されています。

 

つまり、税金を滞納して督促にも応じず、納付しないときに強制的に納税者の財産を差し押さえる権限は、自己破産をする以前から滞納処分を受けて差し押さえられている場合、自己破産をしても差し押さえは停止しません。

 

しかしながら、一般債権の差し押さえの場合では、自己破産が決定すれば差し押さえによる強制執行は中断または失効されます。

 

ところが、会社勤務をしている人が自己破産をする直前に、以前から私情により住民税や社会保険料を会社に立替えてもらっていた場合の立替金を会社に返済する場合は偏頗弁済となり、支払いは禁止されています。

 

これは、立替金という名目が債権者と同じ意味合いであるため、自己破産の直前に立替金を返済することは偏頗弁済に該当するからです。また、税金の支払いを他の人に立替えて払ってもらった場合の立替金を自己破産の直前に返済した場合も偏頗弁済になります。

 

なぜ租税債権の支払いは偏頗弁済にならいの?

租税債権の支払いは特に重要度の高い債権であり、他の一般債権よりも優先されます。

 

自己破産の債権は、大きく分けて「財団債権」「破産債権」「別除権」の3つになります。

 

財団債権は、自己破産の手続きの途中でも、随時分配を受けることができる最も優先順位の高い債権ですが、破産債権は、手続きがすべて終わった後でなければ分配を受けられません。

 

特に重要性の高い債権が財団債権になりますが、ほとんどの債務は破産債権に属することになります。

 

破産債権の中で最も優先的に分配を受けるのが、優先的破産債権です。その内訳は、共益費用・雇用関係費用・葬式費用などの先取特権と、国税や地方税の優先債権があります。いずれも財団債権に含まれないものに限ります。

 

最後に別除権は、財団債権や破産債権のように破産管財人や裁判所を通す必要がなく、自己破産手続きに関係なく行使できる権利で、自動車ローンの担保権や住宅ローンの抵当権などを債権者の判断で売却できる権利のことを言います。

 

自己破産をする直前に毎月の家賃や光熱費などの生活費を支払うことは偏頗弁済にはなりませんが、滞納した家賃や携帯代を支払った場合は偏頗弁済になります。

 

偏頗弁済をすると破産管財人が選任されてその返済行為が否認され、その行為自体の性質によっては免責不許可になり借金の免責が下りない可能性もあります。

 

また、自己破産をする以前より滞納していた水道光熱費に関しては、自己破産の申立て前の滞納分はすべてが免責となりますが、自己破産の申立て日を含む1ヶ月分は免責されません。

 

さらに例外として、下水道代に関しては租税債権として扱われるため、免責されません。また、電気・ガスの供給についても破産法により停められることはありません。

 

自己破産の開始時に滞納している税金は、自己破産の手続きに関係なく破産財団から債権を回収できる財団債権か自己破産する以前から残っていた債権である破産債権のどちらかに分類されます。どちらも、免責されない債権です。

 

また、破産債権のうち、例外として税金に関しては非免責債権となり、自己破産後に免責許可が下りたとしても支払義務が残ります。税金のほかに国民健康保険や年金、未払い給料や養育費、損害賠償債務なども非免責債権になります。

 

ただし、ここでいう損害賠償債務とは、故意か重過失で危害を加えた場合か詐欺のような積極的な害意の2種類だけです。

 

さらに別件として、故意に債権者一覧表に載せなかった債務も非免責債権になります。また、非免責債権があるからといって免責不許可になることはありません。

 

免責不許可になる条件とは、故意に過失行為を行ったことを隠したりしたなどの免責不許可事由に該当する行為があった場合だけです。

 

免責不許可事由とは、自己破産前に財産を隠したり、親族に無償で譲渡したり、浪費で借金を作った場合などが該当します。

 

自己破産時には、破産者の財産を債権者に配分することになりますが、その際債権の違いによって優先順位が違います。

 

まず、自己破産手続きでは「破産債権」と「財団債権」があります。

 

このうち、財団債権は最初に分配を受けられます。

 

分配される債権の内訳順としては、

  1. 裁判所費用
  2. 破産管財人への報酬
  3. 税金
  4. 未払給与

の順になります。

 

次に分配を受けるのが破産債権です。

 

破産債権の中で一番優先されるのが優先的破産債権です。優先的破産債権の内訳は、共益費用や雇用関係などの必要経費のうち財団債権に含まれなかったものになります。

 

他に1年以上前の滞納税金などがあります。破産債権の中には他に先取特権優先債権などがあります。

 

最終順位に一般破産債権がきます。

 

また、別除権というのは債権者の判断で売却できる権利で、自動車ローンの担保権や住宅ローンの抵当権などがあり自己破産手続きに関係なく処分できます。

 

 

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