生活保護者が破産した場合、不正受給した返還金は免責されるの?
生活保護の不正受給問題は、同制度が施行された直後から今日に至るまで脈々と続いており、そもそも不正受給なる四文字熟語自体が正式な法律用語では無く、何をもって該当するとすべきなのか、判断が難しいところです。
明らかに同システムの抜け穴を巧妙に狙っての需給であれば「不正」ですが、故意や悪意が見られぬ結果として「支給」された場合はどうなるのか、今日も議論が続き、細部に至る明確な結論に達せていないのが現状です。
そしてこうした不正受給に該当すると思われる生活保護者が破産した場合、不正受給相当額の返還の義務も免責となってしまうのかなど、新たな疑問が生じるのも当然の流れです。
ここでは多くの方々が混同して捉えがちな、生活保護を不正に受けた際に返済義務を負う、返還金と徴収金の違いに関して、そして自己破産と免責に関する法的解釈、更には自己破産に際して多くの方々が見落としがちな要注意点など、不正受給金に関する要チェックポイントを、色々な角度からの確認作業を進めてまいります。
生活保護の基礎知識
生活保護者として保護金を受け取る資格を得るためには、申請から所定の条件をクリアせねばならず、これは国税を用いて国民の最低限の経済生活を守る主旨からして当然です。
ですが、こうしたハードルが設定されれば、残念ですが意図的かつ巧みにこれをすり抜け、元来保護金を貰う資格が無いにも関わらず支給を受けようとする、もしくは、悪意無く気づかず支給を受けてしまうケースが生じてしまいます。
こうした状況を生活保護費の不正受給と称します。
当然不正な受給分に関しては返金せねばなりませんが、ここでポイントとなるのが「意図的に不正受給を目論んだ」のか「意図が無かった」のかの違いの見極めであり、前者の悪質なケースには、所定のペナルティが用意されています。
ちなみに具体的な罰則としては、生活保護費の支給自体のストップ更に特に悪質と判断された場合には、詐欺罪での起訴となる展開も見られるなど、
不正受給で保護金をあわよくばせしめようとする愚行の代償は小さくありません。
ですが一方で、同じ不正受給の範疇と捉えられるも、前述のような悪意が見られぬケースも多々確認されています。
たとえば年金や生命保険の解約返戻金の受給権が自身に有る事を知らぬまま、これらを申告せずに生活保護申請を出してしまっていたケースが挙げられます。
あるいは家族が同システムを十分い理解しておらず、悪意無く手続き上の不備が生じた結果、不正受給となってしまうケースも見られます。
こうした状況に気づき、速やかに修正申告した場合には、特に悪意が見られる訳ではなく、通常ペナルティが課せられる事は殆どありません。
ちなみに特に悪質性が見当たらぬ、あるいは低いと判定された場合が前者の「返還金」、悪質性が高い場合が後者の「徴収金」です。
自己破産時に免責となるか非免責債権として支払い義務が残るかなど、双方の返還には大きな違いが見られます。
「返還金」「徴収金」の2つのパターン
ここでは以下、不正受給した保護金の返金に際し、返還金もしくは徴収金いずれに該当するかの判定の決め手となる具体例を挙げて検証してみたいと思います。
まずは返還金と判定されるケースですが、あくまで悪質性が見当たらぬ、もしくは極めて小さい事が前提であり、大半は受給者あるいはその家族の手続き上のケアレスミス、あるいは知識不足や誤解釈が要因です。
たとえば生活保護申請時に自身の収入に該当ずる年金受給、契約中の保険の解約返戻金の存在などを悪意無く忘れていて、後に気づいて速やかに深刻した場合、その他申請者が正しく申告したにも関わらず、結果的に不正受給に該当する支給が為されてしまった場合など、返還金となるケースは幾通りも想定されます。
対して、意図的に不正受給を企てた場合は徴収金と判定されます。
生活費に充当可能な預貯金、現金化が可能な自己所有の動産や不動産を隠し持っていた場合、労働収入があるにも関わらず無職を装った場合、健康上働く事に対して支障が無いにも関わらず、虚偽の理由を挙げて求職活動に勤しまないなど、いずれも悪質性が顕著です。
生活保護金という国民の税金を不当に着服しようとする意図が明確であり、こちらの場合は単に返金義務を全うすればクリアとは行かず、何らかのペナルティが課せられる可能性が避けられません。
生活保護の申請に際しては、ケースワーカーとのコミュニケーションすなわち質疑応答が欠かせませんが、この段階で質問に対して虚偽の回答から、後になってその事実が露呈する展開は少なくありません。
大切なのは全てを正直に伝え、指摘に対しては速やかに従う姿勢であり、結果として気づかず不正受給者となってしまうリスクの回避にも繋がります
不正受給に関しては「悪質性の大小に関わらず、全て徴収金とすべき」なる声が強まる傾向が見られており、これまではグレーゾーンで返還金と認定されたケースも徴収金となる可能性が高まっており、申請に際しては正しい知識に基づく正確な手続きが求められます。
自己破産すると返還金や徴収金はどうなる?
抱えている債務が基本全てゼロになる事をメリットと解釈する向きもある自己破産ですが、実際には全てが100%その限りではありません。ちなみに、生活保護の不正受給金に関しても注意が必要であり、現在では免責とはならないケースが存在しています。
この不正受給の返還請求と免責に関しては、同制度が施行されて以来、常に議論が続くポイントであり、何より不正受給か否かの明確な判断基準の設定が難しい事実が、万人が納得する結論の導き出しを困難にしているのも現状です。
ちなみに平成26年までは、不正受給の徴収金は返還金徴収金いずれの場合でも、自己破産により免責」と解釈されていました。
しかし近年では悪質性の大小に関わらず、不正受給の事実が確認された以上、自己破産であっても徴収金は免責にすべきではないとの声が強まり、平成26年の生活保護法改正を機に、不正受給への姿勢が厳しさを増す事となっています。
具体的な罰則の強化としては、悪質性が高く徴収金と認定された返還に際しては、最大で100万円までの罰金の課金が認められました。加えて徴収金に関しては同金額に対し、請求額の40%相当の金額の上乗せも認められ、勿論免責とはなりません。
更には返還義務を負う当事者の承認があれば、月々の生活保護支給額からの天引きも徴収方法の選択肢となっています。
不正受給金額自体が大きくなるのみならず罰金まで加わり、それらが非免責となり背負い続けるとなれば、自らの経済社会に於ける自力生活体制の立て直しどころでは無くなってしまい兼ねません。
この法改正は「徴収金は非免責」を実質的に明確とする効力を有しており、旧来の「自己破産すれば不正受給分も遡ってのお咎めなし」.なる甘い解釈が通用しない事実を物語っています。
但し悪質性が軽度と判断された返還金に関しては、従来同様自己破産で免責となりますが、やはりケアレスミスを含め、こうした当事者とならぬ十分な注意が求められます。
自己破産する前に返還金を返済してしまうと…
債権者に対するせめてもの誠意を届けようとする、ある意味誠実な方々が、自己破産直前まで「僅かでも返せる相手に返せる金額だけでも返金せねば」との思いから返金を続けてしまう事例が後を絶ちません。
そしてこの判断を不正受給の返還金にも当てはめてしまうケースも見られますが、これは法的見地から言えば「誤った行為」に該当し、十分な注意が必要です。
破産手続きに際して特定の債務者だけが優遇される状況は不公平であり、自己破産手続き開始から、弁護士との正式な委任契約の締結が完了し、各債権者に対して受任通知が送付された以降は、いかなる場合でも債務者個人からの債務返済行為があってはなりません。
破産者が有するあらゆる財産は全債権者に公平に分配されねばならず、裁判所の管轄の下に置かれます。破産者の独断で特定の債権者だけに返済されれば、このルールを無視した事となり、破産法違反に抵触します。ちなみにこうした行為を専門用語で偏頗(へんぱ)弁済と称します。
この偏頗弁済なる行為に悪質性が見られた場合、免責不許可事由との解釈から自己破産後も免責とならない展開も想定され、細心の注意が求められます。
個人や金融機関からの借金とは違い、国の制度である生活保護費の返却を「優先せねばならない」との先入観を抱きがちな方々が潜在的に見られますが、これは大きな間違いである事実を正しく理解しておかねばなりません。
身近なお世話になった相手への返済だけを内々に継続から、せめてもの誠意と独解釈してしまう行為も同様です。
自己破産には今後生活を続けて行くに際し、数々のデメリットとなるペナルティに相当する制約があり、対して債務の免責が叶うメリットも存在しています。
自己破産後に非免責の債務を抱えた状態では、その後の経済生活の立て直し自体が非常に難しくなり、更なる窮地に陥る展開が避けられません、
結果としての不正受給状態からの自己破産に際しては、決して独断で何らかのアクションを起こさず、必ず選任した弁護士にその都度相談と確認を徹底する姿勢が求められます。
「返還金」「徴収金」のどちらで返還請求されているか不明な場合
債権者に対するせめてもの誠意を届けようとする、ある意味誠実な方々が、自己破産直前まで「僅かでも返せる相手に返せる金額だけでも返金せねば」との思いから返金を続けてしまう事例が後を絶ちません。
そして、この判断を不正受給の返還金にも当てはめてしまうケースも見られますが、これは法的見地から言えば「誤った行為」に該当し、十分な注意が必要です。
破産手続きに際して、特定の債務者だけが優遇される状況は不公平であり、自己破産手続き開始から、弁護士との正式な委任契約の締結が完了し、各債権者に対して受任通知が送付された以降は、いかなる場合でも債務者個人からの債務返済行為があってはなりません。
破産者が有するあらゆる財産は全債権者に公平に分配されねばならず、裁判所の管轄の下に置かれます。破産者の独断で特定の債権者だけに返済されれば、このルールを無視した事となり、破産法違反に抵触します。
この偏頗弁済なる行為に悪質性が見られた場合、免責不許可事由との解釈から自己破産後も免責とならない展開も想定され、細心の注意が求められます。
個人や金融機関からの借金とは違い、国の制度である生活保護費の返却を「優先せねばならない」との先入観を抱きがちな方々が潜在的に見られますが、これは大きな間違いである事実を正しく理解しておかねばなりません。
身近なお世話になった相手への返済だけを内々に継続から、せめてもの誠意と独解釈してしまう行為も同様です。
自己破産には今後生活を続けて行くに際し、数々のデメリットとなるペナルティに相当する制約があり、対して債務の免責が叶うメリットも存在しています
自己破産後に非免責の債務を抱えた状態では、その後の経済生活の立て直し自体が非常に難しくなり、更なる窮地に陥る展開が避けられません、
結果としての不正受給状態からの自己破産に際しては、決して独断で何らかのアクションを起こさず、必ず選任した弁護士にその都度相談と確認を徹底する姿勢が求められます。
私達の国税を用いる生活保護制度に於いて、元来受給資格を有さぬ人物が支給される、あるいは判定された最低生活費を超える金額を税金で確保する状況は、同制度の主旨に大きく反する状況であり、返還請求は非常にシビアに届けられて当然です。
無意味な放置などから悪質性が高いと判断されれば、自己破産後も非免責となり兼ねません。
そのまま債務を背負い続けるのみならず、更なるペナルティを背負い、自力更生不可状況に陥っては取り返しがつかず、この「返還金」「徴収金」いずれでの請求であるかを正確に見極める初動が大変重要です。
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