自己破産後の滞納税金や租税債権の免責について

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自己破産後の滞納税金や租税債権の免責について

現在、自己破産を考えている方には、経済的に苦しく、税金の支払いに難儀したり、支払いが滞っていたりする方も多いでしょう。中には、税金の滞納分だけで数十万円単位になっている方もいるでしょう。

 

そこで、今回は、自己破産時に滞納している税金がどうなるのかといった点や、税金を滞納し続けるとどうなるのかといった点を中心に見ていきたいと思います。

 

「租税等の請求権」により自己破産で免責されない税金

自己破産後でも、破産法で定められた租税債権は免責されず、支払いの義務が残ります。

 

この租税債権とは、国税や地方税の税金だけでなく、国民年金や健康保険、保育料や下水道料金などの、行政が強制徴収することが認められている債権を指します。

 

比較的勘違いされやすい点ですが、電気、水道などの公共料金のなかで租税債権に該当するのは、下水道料金だけです。他の公共料金は直近1ヶ月分を除き免責されますし、自己破産開始後に以前の滞納を理由に止められることはありません。

 

しかし、自己破産の申し立てを行なっても、自己破産の開始前だと、滞納を理由に供給を停止される場合があるので注意が必要です。

 

また、破産開始後に滞納した場合も、もちろん供給が停止される可能性があり、免責されるのは、破産開始前ではなく、破産申し立て前の滞納分なので、破産申し立てから破産開始までの期間の料金が未納で、供給を停止されることもあります。

 

租税債権は、自己破産で免責が決定しても免責されない債権ですが、自己破産の手続きの際には、債権者として滞納公租公課一覧表に記載して提出する必要があります。

 

自己破産手続きの際、滞納している租税は、財団債権破産債権に分けられます。

 

財団債権はそもそも免責されることのない債権で、破産債権に分類されたとしても、例外的に免責を受けることができない非免責債権となってしまうので、どちらにせよ免責を受けられないことには変わりません。

 

違いは、配当の優先順位で、財団債権は、配当を待たずに管財人に交付要求したり、破産者に請求したりできる点ですが、その違いも、同時廃止などで配当が発生しない場合はあってないようなものです。以下では、管財事件で配当が発生する場合も考慮して、分類の基準を紹介します。

 

租税のなかで、財団債権に分類されるのは、納付期限から1年以内のものと、まだ支払期日に至っていないものと、それらに付随する延滞税です。

 

破産後、破産債権になった車にかかっている自動車税や住宅になどかかっている固定資産税なども、財団債権となります。

 

それ以外のものは破産債権に分類されるのですが、破産債権のなかでも優先的破産債権劣後的破産債権に分類されます。

 

優先的破産債権に分類されるものは、納付期限が1年以上前のものと、それに付随する延滞税で破産開始前のものです。

 

納付期限が1年以上前の租税の延滞税でも、破産開始後の延滞税は、劣後的破産債権に分類されます。その他に、加算税はその時期を問わず、劣後的破産債権に分類されます。

 

ここで言う、優先、劣後はあくまで、配当を行う際の優先度の話であり、どちらも非免責債権であり、返済しなければならないことに変わりはありません。

 

非免責債権になる債権には租税等のほかに、養育費や一部の損害賠償、債権者一覧表に記載を忘れた債権などがあります。

 

自己破産から6ヶ月前までの公共料金などほかにも優先的破産債権に分類される債権はありますが、非免責債権でなければ、配当時に優先されるだけで、その後はきちんと免責になります。

 

自己破産でも停止しない税金の「滞納処分による差押え」

 

また、租税を滞納している場合は、一般的な債権以上に差押さえに注意しなければなりません。

 

税の法律は厳しく、期日までに納付がない場合は、督促状を“発行せねばならない”、それでも納付がない場合は、財産を“差し押さえねばならない”となっています。

 

そのため、“できる”ではなく、“しなければならない”という督促状の発行や財産の差押さえは行政の権利というより、義務に近いものがあります。

 

そのため、分割納付の協議や督促状を無視し続けた場合、早いうちに、給与や住宅を差し押さえられる場合もままあります。

 

基本的には督促状などを無視し続けた場合に、差し押さえに発展することが多いため、実務上は、口座や給料の差し押さえによって、督促状などでは反応がない納税者の反応を見て、納税交渉を行う為の差し押さえが多いです。

 

住宅を差し押さえる場合も、即座に公売にかけられるわけではなく、住宅を勝手に売却させないためにひとまず差し押さえるという場合が多いようですが、油断は禁物です。

 

税金の徴収のための差押さえは、裁判所の力を借りずに、自治体が独自で行えるため、差押さえの割合は、金融機関などによるものよりも、自治体によるものの方が圧倒的に多いほどです。

 

場合によっては、給与や口座、不動産だけでなく、自宅に踏み込んで価値のある車などの動産や時計などの貴重品、果てはブランドバッグなどの差押さえを行うこともあります。

 

生活必需品などの差押さえ禁止財が差し押さえられる心配はありませんが、本人の同意や裁判所の令状を必要とせず、家の鍵や金庫などを勝手に開けることも許されています。ちなみに、これらの差し押さえられた動産は、公売オークションなどで換価されます。

 

そのただでさえ多い、行政による差押さえですが、通常の差押さえと比べて、厄介な点がもう1つあります。

 

一般的な債権の差押さえであれば、財産を差し押さえられても、自己破産を開始すれば、差押さえは中断され、その後の差押さえは行われなくなります。

 

しかし、行政による差押さえの場合は、自己破産開始後であれば、財産を差し押さえられる心配はありませんが、自己破産前に差し押さえられていたものは、自己破産の申し立て後も差押さえが中断されませんし、自己破産開始後も解除されません。

 

したがって、給料などを差し押さえられている場合は、自己破産後も給与の差押さえが続き、差押さえを解除するには、滞納している税金を支払う以外に方法はありません。

 

滞納税金が支払えない場合どうすることも出来ないの?

つまるところ、租税の滞納に関して言えば、自己破産はほぼ役に立ちませんし、租税の徴収は行政の権限のため、裁判所もあまり役に立ちません。

 

どうしても支払が困難な場合は、役所の徴税職員に、税金を支払う意思を認めてもらい、分割納付を認めてもらうのがいいでしょう。

 

分割納付が認められた場合、差押さえが猶予される場合もあります。行政の側も、税の滞納に対するペナルティを与えることが目的ではなく、税金を回収することが目的のため、分割納付を認めたほうが継続的に回収しやすそうだと判断されれば、分割納付を認めてもらえます。

 

逆に、行政は人情で猶予を与えているわけでもないので、滞納税金よりほかの債権への返済を優先しているなどの実態があれば、どれほど窓口で誠実な態度をとろうとも、分割納付が認められることはありません。

 

納税義務は消滅する「滞納処分の停止」は何年?

自己破産でも免責になることのない租税の滞納ですが、支払の義務が決して消えないわけではありません。

 

滞納処分をする財産がない場合や、滞納処分を行なうことで滞納者の生活が著しく困窮する場合、滞納者の所在も財産もわからず滞納処分が行なえない場合は、滞納処分の執行停止を行ないます。

 

この執行停止状態が3年間続いた場合は、納税の義務がなくなります。

 

しかし、納税義務の消滅を狙って支払わずにいると、延滞税もかかり、支払いは膨らむでしょう。行政側は、執行停止を行なった後でも、一定期間ごとに滞納者の財産をチェックします。

 

行政側は法律によって、身辺調査や財産調査が認められており、滞納者の勤務先に対して給与の照会を行うこともできますし、銀行に文書を送るだけで口座の照会ができます。

 

これらは、本人の同意は必要なく、照会を求められた側も、それに応じなければなりません。そして、それによって差押さえ可能な財産が見つかるなどで財産が復活した場合は、執行停止は解除され、差押さえが再開され、3年の期限もリセットされます。

 

仮に、納税義務が消滅したとしても、全ての納税義務が消滅したわけではなく、あくまで、消滅するのは、滞納処分の執行停止が行なわれた分だけなので、生活していくなかで発生する新たな税金は支払わなければなりません。

 

延滞税の利率も高く、平成29年時点で、滞納から1ヵ月以内は年利2.7%、2ヶ月目以降は年利9.0%となっています。

 

基本的に税の支払を後回しにするメリットはないため、他の債権より優先して支払うべきです。

 

本来自己破産前に特定の債権者に優先して返済することは、偏頗弁済にあたり、免責不許可事由に該当するのですが、税の支払に関しては例外になっています。

 

そして、滞納している租税の支払を行なう場合は、必ず元本から支払うようにしましょう。

 

元本の納税が終わるまで、延滞税が増え続けてしまうためです。延滞税は本税にのみかかるもので、延滞税に対して延滞税が発生することはありません。

 

しかし、この点に関しても注意点があり、例えば病気等で休職しており、勤務先に保険料の立て替えを行なってもらっている場合、勤務先に優先的に返済した場合は、偏頗弁済となってしまいます。

 

これは、この場合の債権は、租税に対するものではなく、あくまで勤務先に対する借金として扱われるためです。

 

また、公共料金の支払にも注意が必要です。

 

前述のとおり、公共料金で破産後も免責されないのは下水道料金だけで、他の料金は免責されるのですが、それは逆に、下水道料金以外は、通常の債権であり、優先的に返済した場合、偏頗返済になり、免責不許可事由に該当する場合があります。

 

裁判所も、一般生活に必要な公共料金の滞納分の返済は偏頗弁済にはあたらないとして、許容してくれる場合もありますが、勝手に支払ったりせずに、弁護士に相談するのがいいでしょう。

 

行政に支払うお金のなかで、免責になるものもあります。生活保護の不正受給の返還金はそれに該当します。

 

生活保護の不正受給というと悪いイメージを持たれる方も多いと思いますが、ミスや手違いなどで、本来よりも多く受給してしまうこともあります。

 

受給者に悪意がなく、不正受給に気が付いた時点で申告があった場合は、返還金という形での返還になります。返還金の場合は、全額の返還を求められない場合もあり、支給される生活保護から天引きされることはありません。

 

そして、この返還金は自己破産のときに免責されます。

 

しかし、全ての不正受給した生活保護が免責になるわけではありません。

 

受給者に悪意があり、不正受給に気が付いた後も申告せずに隠し続けた場合の返還は徴収金となります。ニュースなどで話題になる不正受給はこのパターンです。

 

徴収金は自己破産後も免責にならない、非免責債権となります。また、度々の注意となりますが、返還金は、自己破産で免責となる通常の債権のため、優先的に返済を行った場合は、偏頗弁済となってしまいます。

 

法人と個人では異なる

ここまでは個人の自己破産の際の租税債権についてみてきましたが、法人における自己破産の場合の扱いも見ていきます。

 

法人が税金を滞納した状態で破産した場合、個人の場合と同様に、租税債権は免責されません。

 

しかし、租税の請求先はあくまで法人であり、その法人がなくなってしまえば、租税の請求相手もいなくなってしまうため、租税の請求ができず、事実上、租税債権は消滅してしまいます。したがって、法人の破産の場合では、一般的には経営者に対して、租税の支払義務が生じることはありません。

 

しかし、これはあくまで、一般的なケースであって、例外的に、経営者に支払い義務が生じるケースもあります。それは、経営者が個人的に法人の税の支払に対して保証人になっている場合です。

 

個人の滞納の場合と同じように、法人の場合も財産の差押さえをとめるために、換価の猶予や分割納付を認めてもらうことができますが、その場合は、担保として、経営者個人の納税保証が求められることがあります。

 

この場合は、納税保証書を提出しているので、その後、法人が破産し、なくなったとしても、保証人は税の支払を免れることはありません。また、保証人以外にも、合名会社の社員と、合資会社の無限責任社員にも、破産後の税の支払義務が発生します。

 

状況に応じて求められる対応が変わってくるため、確実な対処を行うためには、専門家である弁護士の力を借りるといいでしょう。無料での相談を受け付けている弁護士事務所もあるため、一人で悩まずにまずは相談してみましょう。

 

 

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