強制執行に必要な「債務名義」を取得するには?

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強制執行に必要な「債務名義」を取得するには?

強制執行には「債務名義」というものが必要だと知っていましたか?その人が銀行に預けている預金や給料、不動産などの資産を差し押さえる、競売にかけるなどして強制的に貸しているお金を回収するためには、債務名義が必要となるのです。

 

債務名義とは、自分が債権を持っていることを証明するための書類です。

 

これは私的なものではなく、公的な証明を受けたものでなくてはいけません。つまり、単なる契約書などの当事者同士だけで作成した書類は債務名義とはならないのです。

 

債務名義の例としては、

  • 裁判所で作成された和解調書、
  • 調停調書や公証役場で作成した公正証書、
  • 裁判で下された確定判決、
  • 仮執行宣言付判決

などが債務名義にあたります。

 

なお、確定判決とは「○○○円を支払え」、「○○の建物を明け渡せ」などの命令をしている判決で、上級の裁判所によって取り消される可能性の無くなった判決のことであり、仮執行宣言付判決とは仮執行の宣言が付された給付判決のことです。

 

強制執行の3つの種類

債務名義とは何なのでしょうか?

 

自分が誰かにお金を貸していて、その人は「今はお金がない」といっているが、銀行口座にお金があることは知っている・・・

 

こんな状況のとき、強制的に貸したお金を回収できないものでしょうか。

 

銀行口座や給与などの債権を差し押さえる、車、腕時計などの動産、住宅などの不動産を競売にかけて換金し、強制的に債権を回収することは可能です。所謂、強制執行というものです。

 

しかし強制執行を行うには裁判所に申し立てる必要があり、そのためには債務名義という証拠となる公的書類が必要となります。

 

ただし、当事者同士で作成した契約書などの証拠書面は、債務名義とはなり得ません。当事者同士で作った契約書なども法的な力を持っており、裁判でも証拠として取り扱われますが債務名義ではありません。なので、これらの書類があっても強制執行はできません。

 

債務名義は裁判所や公証役場といった公的機関が作成したもので、債権が存在することや、貸した金額が証明できる書類のことを指します。ですからこういった書類がない場合には、債務名義を取得しなければなりません。

 

話し合いなどで支払いの期限や金額について和解できる場合は、公証役場で公正証書を作成すればよいでしょう。逆に全く話し合いができる状況でなく、催促も無視されているときには、裁判所に申し立てて少額起訴や支払督促をすればよいでしょう。

 

できるだけ短い期間で債務名義を取得するためには、可能な限り通常起訴を避けるのが重要です。強制執行で相手の財産を差し押さえるには、3つの方法があります。

 

そのひとつは不動産執行です。

これは住宅や土地、マンションなどを強制的に競売にかけてお金を回収するものです。

 

次に債権執行です。

これは相手の銀行預金口座や給与債権を差し押さえてお金を回収するものです。

 

最後のひとつは、動産執行です。

ルビーなどの宝石やアクセサリー、時計、絵画などの芸術作品、自動車やバイクなどを差し押さえるものです。不動産や債権以外のものを差し押さえると考えても良いでしょう。

 

 

もちろん、いずれの執行を行う場合でも、債務名義が必要です。

 

ところで、強制執行をするために債務名義が必要なのはなぜでしょうか?

これは自力救済の禁止という原則が日本の法律に盛り込まれているからです。

 

この原則によって、お金を貸している人自身がお金を貸している相手から強制的に、例えば暴力で脅すなどして財産を取り上げることは認められていないのです。だから強制執行をするためには、裁判所に申し立て、適切な法的手続きを行う必要があるのです。

 

なるべく話し合いで債務名義を取得しよう

債権が本当に存在していることとその金額について契約者同士で納得しあっており、その上で厳しく支払期日を設定したい場合は、公正証書を作るか、即決和解をすることを推奨します。

 

いずれも、支払期日と金額を非常に強い法的効力を持つ公的書面で記録するものです。それらがあるからといってすぐに強制執行をすることはできませんが、もしも債権者が支払いを怠った場合には直ちに強制執行をすることができます。

 

なお、公正証書とは、法務局連下の公的機関、公証役場に債権者と債務者の両方が直接訪れて、公証人立ち会いの上で作成する公的書面です。

 

金銭消費貸借契約だけでなく、離婚協議書などの金銭債権についての書面を公正証書として残しておけば、あとでその書面に記載されている行為が行われなかった場合には、債務名義をその公正証書として、直ちに強制執行に踏み切れます。

 

ただし、公証役場は議論の場ではありません。

 

公証役場は争いをとりなしてはくれず、当事者間ですでに決定された事項を書面にするのみです。書面内容に違法性がないかはチェックしてくれますが、どちらかに利益が偏っていたとしても、当事者間の決定事項をそのまま公正証書に残すのみです。

 

なお、債務名義取得の手段として公正証書を活用することの利点は2つあります。

 

書類作成にかかる時間がとても短期間であるということが、そのひとつです。

 

最短では、公証役場に申請してから2週間程で作成できますので、あまり時間や手間暇を掛けずに債務名義を取得可能です。

 

裁判所にゆかなくてもかまわないというのが、もう一つの利点です。

 

裁判所にはとても厳格なイメージがありますから、債務者に「裁判所で債務名義を取得しよう」と提案しても、相手が強い心理的抵抗感を与え、同意してもらえない可能性を高めてしまいます。公正証書ならば裁判所に行く必要がありませんから、よりスムーズに債務者の同意を取り付けることが出来ます。

 

また、即決和解は正式名称を「訴え定期前の和解」(民事起訴法275条)といいます。

 

これは公的証書と同じく、最初は当事者同士のみで話し合って支払い期日と金額、支払い方法を決定します。内容の合意に至ったら簡易裁判所に即決和解の申し立てを行います。

 

その後簡易さん番所から当事者に呼出状がと届けられますから、債権者と債務者は指定された日に裁判所に出頭することになります。裁判所が合意内容を妥当と認め、裁判所で当事者同士が和解内容に合意することを確認すれば、簡易裁判所が和解調書を作成してくれます。

 

なお、和解調書もまた債務名義になりますから、和解調書の記述通りの期日までに債務者が支払いを行わなければ、和解調書が債務名義になり強制執行をすることができます。

 

これも公正証書と同じですが、即決和解でも裁判所は当事者同士の争いを仲裁してくれるわけではありません。ですから、和解の合意内容は予め当事者間で話し合い、決定しておく必要があります。もしも合意ができないのなら、民事調停や少額起訴といった、違う方法をとる必要があります。

 

また、即決和解には1500円しかかからないという利点もあります。また、公正証書ではあくまで金銭債権のみについて効力を発揮しますが、和解調書ならば不動産など別の資産についての合意でも債務名義として活用できます。

 

ただし、裁判所に申し立てを行ってから和解調書作成手続きに入るまでには1ヶ月以上かかりますので、迅速さの点で公正証書に譲ります。

 

そして口約束しかしておらず、契約書や合意書が無い場合にはまず公正証書を作成しておきましょう。

 

こうした証拠がなければ、万が一裁判を起こしても負けてしまうかもしれません。債務者に実際支払い義務があることを証明するのは、債権者の責任です。それができなければ、裁判でそんなことは覚えていない、などと言われてしまえば、証拠なしでは確定判決を得る方法はありません。

 

ですから、強制執行をするかもしれないのなら、和解の段階であらかじめ裁判所に和解調書を作ってもらいましょう。

 

また、金額や支払い方法について意見が合わない場合、どうすれば良いのでしょう。

 

このような場合のうち、債務者も自分に支払い義務があることを理解しているが、いくら払わなければいけないかという点で争っているときには、裁判所で民事調停を利用すると良いでしょう。

 

民事調停とは、裁判官と調停委員(弁護士などの有識者)の仲裁のもとで和解し、作成してもらう書面です。

 

裁判のように勝敗を争ったりはせず、話し合いでお互いに納得できる和解案を探します。そのため、相手に話し合いに応じる気がなければ、調停が成立することはありえません。

 

相手が交渉に応じ、和解案がまとまれば、裁判官が調停証書を作成します。これは債務名義としての効力を持っていますから、相手がこの証書の内容に違反すればすぐに強制執行ができます。

 

なお、民事調停の流れは次のようになります。

 

  • まずは当事者のいずれかが民事調停を行いたい旨を簡易裁判所に伝え、申し立てを行います。このときにかかる手数料は民事調停を行う契約の金額にもよりますが、ほとんどの場合1000円以下に収まります。
  • 申し立てが受理されると簡易裁判所が調停期日を債権者と債務者の両方に呼出状を送付して伝えます。1つの係争につき裁判官1名に加え、民間の弁護士や有識者が少なくとも2人の計3人以上で調停委員会が組織されます。
  • 民事調停は和解成立までの期間が裁判に比べて早くなりやすく、たいていは1~3回の調停期日が決められ、平均約三ヶ月以内に和解になります。

 

強硬的な手段で取立てたい場合

すでに支払期日が過ぎているのに債権者から支払いがされておらず、その上で相手がどうにも支払ってくれ無さそうなときには、より強引な手段で債務名義をすべきです。それには

 

「支払督促」「少額起訴」「通常起訴」の3つの手段が考えられます。

 

前述の公正証書や民事調停に対して、債務者の同意が無くとも債務名義を取得できる手段です。ただし相手が異議申し立てなどを行って争う姿勢をとると、強制執行までに長い時間がかかることがありますから、それを覚悟しなければいけません。

 

初めの方でも記述しましたが、通常起訴には長い時間がかかります。そのため、債権者としてはなるべく通常起訴を起こさずに債務名義を取得したいというのが人情でしょう。

 

このとき、より短期間で債務名義を取得する手段として、「支払督促」「少額起訴」が挙げられます。

 

支払督促では、債権者が裁判所に事実関係を証明する書類を提出しさえすれば、裁判所が債務者に支払を命令する書類、支払督促を送付してくれます。

 

それから2週間以内に債務者からの異議申し立てが行われなければ、裁判所はさらに「仮執行宣言付支払督促」を債務者に送付します。

 

それからさらに2週間債務者からの異議申し立てが行われなければ、債権者は強制執行ができるようになるのです。そのため、最短4週間で債務名義を得られます。

 

ただし、欠点もあります。支払督促送付後2週間以内に債務者に異議を申し立てられてしまうと、すぐさま通常起訴になってしまい、結局長い時間がかかってしまいます。債務者に少し法律関係の知識があるだけで債務名義を取得できなくなってしまう可能性が高いのです。

 

支払督促は請求するのも、それに抵抗するのも簡単な制度なのです。

 

次に、少額起訴について説明します。

 

少額起訴は請求額が60万円以下のときにしか利用できませんが、判決がでるまでに1回しか審理をおこなわない、とても早く判決が下る起訴です。その判決には仮執行宣言が付きますから、この起訴で勝利すれば債権者は判決直後から強制執行を行えるようになるのです。

 

とはいえ支払督促と同じく、審理が行われる日以前に債務者が通常起訴を行うことを申し立てると、通常起訴に移行されてしまい、結局は長い時間がかかってしまいます。相手の同意を得ずに債務名義を得るのには、得てして長い時間がかかってしまうものなのです。

 

相手に抵抗された場合

これまでの内容でお察しの方も多いでしょう、債務者が徹底的に抵抗するのなら、通常起訴を行うしか債務名義を取得する方法はありません。

 

その場合には、裁判であらそっている間に債務者に資産を隠されてしまわないように注意しなければいけません。例えば銀行口座の預金を他の支店に移すなどされてしまうと、差し押さえることは難しくなります。

 

【債務名義を取る方法】まとめ

最後に、強制執行のために債務名義を取得する方法をまとめます。

 

強制執行をするためには、債権の実在とその金額を公的機関によって保証された書面である、債務名義が必要です。

 

これを得るための方法としては「即決和解」「公正証書」「民事調停」「支払督促」「少額起訴」「通常起訴」が挙げられます。

 

まだ支払い期限が訪れていない場合で、まだ支払いを待っても良く、かつ既に支払い金額、支払期限、支払い方法が当事者間で合意できている場合には裁判所で「即決和解」を行うか、公証役場で「公正証書」を作ってもらいましょう。これらがそのまま債務名義となります。

 

金額や支払期限、方法について争っている部分があり、裁判所などに仲裁してもらいたいときには、簡易裁判所に民事調停を申し立てましょう。裁判所で和解することができれば、相手がそのときに作った書面の内容に背いた場合には強制執行ができるようになります。

 

また、すでに支払いの期限を過ぎており、できるだけ早く取り立てを行いたく、さらに相手と交渉の余地がない場合には、裁判で争わなければいけません。

 

このとき行える方法は「支払督促」「少額起訴」「通常起訴」の3つがあります。ですがいずれの方法を選んでも、取り立てまで1年以上かかる可能性があります。

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